事例紹介

新エネルギー非営利活動促進事業 宗教法人貞昌院

2003年11月に、弊社にて 横浜市 港南区上永谷 にあります禅宗(曹洞宗)の寺院「貞昌院」、敷地内にあります庫裏へ 5.554kwの太陽光発電設備システムを設置させていただきました。本工事は、太陽光発電の啓蒙普及を主眼としましたNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の平成15年度の補助金事業として行なわれました。

今回は、貞昌院副住職 の亀野様より「環境問題をお寺から地域へ」と題して原稿をお寄せ頂きました。
※ 貞昌院は 横浜市 営地下鉄「上永谷」駅より徒歩 1~2分、環状2号線沿いにあります ので、是非見学に行っていただければと思います。

環境問題をお寺から地域へ 貞昌院副住職 亀野哲也

貞昌院は 港南区 上永谷にある禅宗(曹洞宗)の寺院です。 2003年11月に太陽光発電設備を設置し、一年が経過しましたので、その経過と実績をご紹介いたします。
お寺と太陽光発電設備?意外と思われるかもしれませんが、この組合せは、実は意外でも何でもないのです。 福井にある大本山永平寺の山門には「杓底の一残水 流れを汲む 千億の人」という大きな石碑が建っています。
水は、私たち生きとし生けるものの生命を守り、育んできました。けれども物が豊かに揃い、いつでも手に入る今日では、つい大切なもののありがたさを忘れてしまい、粗末にしてしまいがちです。
永平寺の開祖、道元禅師は、朝の洗面の際に残した柄杓の底の水を「仏のいのち」と思われ、大切に川に戻されたそうです。道元禅師が書かれた『典座教訓』という書物にも「水は是れ身命なりと知る」と記されています。 このように、一人が節約し、大切にする水は僅かなものかも知れませんが、その尊いまごころの集まりは、やがて大河となり大海に出て、雲となって、再び谷川に新たな潤いをもたらす、そのような意味です。

古来より、日本人は、私たちは自然の中から生まれ、自然に生かさせていただいているという考えを持っていました。自然を大切にし、自然とともに生きようという心、それは禅の精神にも受け継がれているのです。

お寺では、数年前から、家庭でできる具体的行動として次の 10項目を提示し、実践してきました。

  1. まわりの樹木・植物を大切に育てましょう
  2. 水の出しっぱなしを止め、調節コマをつけたりして大切に使いましょう
  3. 電気機器のスイッチはこまめに切りましょう
  4. ゴミは分別分類して出しましょう
  5. 余りものが出ない食事を工夫しましょう
  6. 風呂の湯を洗濯・掃除・水まきに利用しましょう
  7. 排水口にゴミ取りのネットをつけて、下水道を守りましょう
  8. 空き缶やタバコのポイ捨てをやめましょう
  9. 除草剤はできるだけ使わないようにしましょう
  10. 自動車のエンジンは不要の時は止めましょう

近年の内外におけるエネルギー消費量の著しい増加を背景に、 1997年京都で開催された気候変動枠組条約国際会議(COP3)における京都議定書の採択など国際的な地球環境問題へ意識が高まっています。 すなわち、化石燃料を代替する新エネルギー導入や省エネルギーをより一層推進していく事が求められています。
そのような機運もあり、今回ご紹介する太陽光発電設備を設置することになったのです。

設備導入に当たっては、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の平成 15年度非営利活動促進事業の補助金交付を受け、(株)スカイテック様の施工により、2003年11月4日より運用を開始しています。

これまでの一年間の活動概要は次のとおりです。

  • 庫裏屋上に架台を組み、 5.554kwの太陽光発電設備システムを設置した。
  • 発電設備の周囲に大型の看板パネルを設置した。
  • 客殿玄関に、現在の発電量を示す大型表示装置を設置した。
  • 上記発電量大型表示装置の前に各種資料を配布できるよう棚を設置した。
  • インターネットで太陽光発電についての資料、発電実績を公開。
  • 新聞メディアから取材があり、記事として掲載された。
  • 地元小学校の地域探検・環境勉強会(児童 50人)、檀家さんへの施設紹介(参加者120人)、近隣寺院との勉強会(参加者20か寺、420名)

このように、数多くの反響があり、特に太陽光発電設備と実際に発電された電気を見ていただくと、太陽光のエネルギーとしての力を実感してくださるようです。

貞昌院太陽光発電の推移(従量電灯C 25KVA)

さて、これまで一年間の発電実績をグラフにまとめてみました。

太陽光発電設備を導入する前は、電気代が月 30,000円程度かかっていました。(節電に心がけていたとはいえ、本堂、客間、庫裏の電気代はかなりかかるものですね)
設置した当初は、晩秋ということもあり、日照時間も少ない時期でしたが、冬至を越えてからは発電量もぐんぐん伸び、実質電気代(買入電気料金ー売電料金)は、概ね 10,000~15,000円前後となりました。特に6月、7月、8月は晴天の日も多く、実質の電気代は10.000円を割込んでいます。

今年は台風も多かったのですが、ここ一年間、トラブルも無く、特にメンテナンスも必要とせずに順調に安定した電力を供給してくれる太陽光発電は、非常に優れた新エネルギー設備であるということを実感しました。今後は、発電設備のさらなる拡充や時間帯別料金により、電力の完全自給も視野に入れて検討をしようと考えています。

末筆になりましたが、設備の設置・施工から設置後に亘り、丁寧な対応を戴いていますスカイテック様に心より感謝の意を表します。